2006年11月20日

D.L.シャクター「なぜ『あれ』がおもいだせなくなるのか〜記憶と脳の7つの謎〜」

 今朝は終わった仕事を3つとも抱えて心軽やかに(しかし寝不足気味なのであくまで体は重め残りで)出勤。

 …2つリテークだ!がんがれ俺!

 …そして、今日読了した本じゃない本、週末の仕事の足をも引っ張っていた本のご紹介〜(っておい)w

 今年読了した本46冊目、D.L.シャクター:著「なぜ『あれ』がおもいだせなくなるのか〜記憶と脳の7つの謎〜」日経ビジネス人文庫:刊。
 「日経ビジネス人文庫最新刊」のオビがついていますが、そこにはこんな風に書かれています。

あの人の名前が出てこない
鍵の置き場所がわからない
物忘れの悩みをずばり解決!


 …といっても、「物忘れをしないためのハウツー本ではなく、心理学から現在の神経科学までの研究を元に、われわれの脳が時に困った状態に陥るのは何故なのか…ということを概説した本です。
 「困った状態」とは、次にあげる7つ。ひとつの問題について一章を割いていますので、各章のタイトルを引用しておきます。

1:なぜ、ずっと覚えていられないのか(物忘れ)
2:忘れっぽい人の研究(不注意)
3:あの人の名前が思い出せない(妨害)
4:デジャ=ヴュから無意識の盗作まで(混乱)
5:偽の記憶の誕生(暗示されやすさ)
6:都合がいい記憶、都合が悪い記憶(書き換え)
7:嫌な出来事が忘れられない(つきまとう記憶)


 1章から7章まではそれぞれ学問的にどんな検証がなされ、今はどういうシステムになっているとされている(生理科学的に解明されたらしい部分もあるし、定説だけど仮説、という部分もあるみたい)のか、脳のどの部分が関与しているのか…といった、それぞれの問題点についてのお話。
 で、第8章では、1章から7章までに詳述した記憶の七つのエラーがなぜ起こるようになってきたのか、ということを進化論的な見地も交えて俯瞰して見る、というような構造になっております。

 原著ではこの7つの不都合な点は、「sin=聖書における7つの大罪」と言う言葉を使ってるんですが、翻訳の段階で「エラー」という言葉に切り替わっております。8章の「これらのエラーは罪ではなくむしろ適応システムの一面」という論旨を考えると、こう訳したのはキリスト教的な言葉への日本人のなじみの薄さ以上に本質を捉えていてヒットだと思う。
 たとえば1章で扱う「物忘れ」にしたって、「記憶するべきスペースを確保するため、アクセスが頻繁になされない情報は徐々に思い出しにくいところに追いやられる」ってことなわけで、これは罪(原罪)と言うよりもむしろ不具合(というか仕様?)ですよね〜。
 …原著も多分研究者ではなく一般向けに書かれた概論的書物なんだろうけど、さらにとっつきやすくなるように訳されてる感じがして嬉しい訳です。こういう配慮がなされた本がたくさん出てくれると「学問に対するとっつきにくい感」が軽減されるような気がするな。

 …1章から7章の各論では、心理学的面白実験が目白押し。特に笑ったのが次の実験。

キャンパスで学生に作業員Aが道をたずねる
   ↓
2人の間を修理するために外したドアを持った人たちが通りぬける
   ↓
実はドアの後ろにもう一人の作業員Bがいて、道をたずねた作業員Aと一瞬ですりかわる
   ↓
学生は2人の作業員が入れ替わったことに気がつくか?


それなんてコントですか!?w

 実験風景も想像すると笑えるけど、これを研究室であーでもないこーでもないと考案する心理学者とか、実験スタッフが走り抜けるドアの後ろですりかわる練習を重ねるとか、そういうのを大真面目でやってるわけで。こういうのを想像すると、心理学っていいよなあ、と(クリエイティブな意味でも牧歌的な意味でも)思っちゃうんである。

 …そういう意味で、読者を選ぶとは思うけど、まじめな学問の中にある努力と根性とネタとオチとを感じたい方は、ぜひ。

 …そして、ここ的にはやっぱりオチを用意しておかないとね。翻訳者にも著者にも罪はないけど、オビのあれ(この記事最初の引用を参照)。

悩み、解決しませんてば!

 「あの人の名前が出てこなかったり鍵の置き場所を忘れたりする悩み」は万人共通の現象であることはわかったけど、それで解決にはなりませんよね。


PS:そのほか、人の考えてることには思いのほか妄想の混入率が高いことがわかってちょっとガクブル。基本的にはここの記事は100%事実というわけではない(感想が混じっただけで事実の純度ってかなり下がるよね)という認識はあるんだけど、もしかして妄想率のほうが事実よりも勝ってるかもです。

 …さらに突き詰めると私自身の存在がすでに妄想なのかもしれn(ry
posted by NOIRA at 21:56| Comment(6) | TrackBack(0) | ブックレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちょっと面白ろそうな本ですね。最初に仕事仲間の名前と顔が一致しないこと多々あり…派遣は入れ替わりが早すぎて(笑)覚えるの苦労してます。
Posted by 美威 at 2006年11月20日 22:13
ちょい興味あり〜な本です。
ねるるんなんて、忘れるの早いし〜f(^^;)
はなから覚えてないっつー噂もあるけど〜。
それ以前に聞いてないっつー事実もあるけど〜★
ともあれ。今度探してみよーかしらん?

で。WONKA届きましたぁ。ありがとーございますぅ\(^^)/
さっそく食べちゃった感想を我がHPに書き込んでみたりして(^^)v

しょしらてばさま♪
楽しい企画に混ぜてくださって、ほんとにありがとうございました!
これをご縁に、仲良くしてやってくださいませ〜(^^)
また何かあったらお声をかけてくださると嬉しいです☆
よろしくお願いしますぅ(^・^)
Posted by ぷるるん at 2006年11月20日 23:06
美威さん

派遣は仕事場とか組む相手とかころころ変わって大変そうですね〜。短期間で成果出さなきゃいけないようなイメージもあるし。

ぷるるんさん

そうそう、忘れるの早っ!っていうのは1章で、
聞いてない、覚えてないってのは2章の内容。
これって単純に「思い出せない」と考えると一緒だけど、脳の作業領域とか違うんですよ〜。

お二人とも

ちょっと硬めの本ではあるけど、一般向けなので興味があったら見てみてね〜^^
Posted by NOIRA at 2006年11月20日 23:35
この世は蝶のみる夢である、なんて言われることもありますからねえ。
(中国の文学かなにかだったかな)

案外みんなNOIRAさんの夢だったりして*'-')
Posted by WIZ☆MEPHIST at 2006年11月21日 07:23
短期間で成果か…人それぞれ得て不得手がありますからね…なんとも。派遣がシビアだと思うのは、一ヵ月で休みすぎる方と、どこの箇所にも対応出来ない方はクビみたいです(←すでに何人かいました)私は、派遣自体で働けるか不安だったんですが、今は余裕?というか覚えて流れに乗れれば楽チンで…こんな楽でいいのかと思ってしまう(←前の印刷会社が難しいかったせいか?)
Posted by 美威 at 2006年11月21日 20:10
WIZさん

荘子の「胡蝶の夢」ですね。
鳳凰とか玄武とかじゃなくて、はかない蝶の見る夢…というのが肝なんだろうけど、個人的にはりんぷん系は却下の方向でw

案外みんな私の見る夢…

そうか!
 神 は 私 か !
(違いますから)

美威さん

うーん、たとえば楽な職場だったとして、そこに安住できないのも派遣の難しさだと思うわけで。
Posted by NOIRA at 2006年11月21日 20:27
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